着物の血液シミはシミ抜きできる？3つのポイントを確認！

2020/03/31 2020/09/16

生理や切り傷等で付く血のシミは、着物に付くシミの中でも対処に困る汚れのひとつ。特に出先で着物に血液シミが付くと、応急処置をすべきかどうかも迷ってしまいますよね。また「血のシミをクリーニングに出すのは…」と、自宅で着物の血液シミのシミ抜きをしたいと考える人も多いのではないでしょうか。ここでは着物の血液シミを自分でしみ抜きする方法等、着物に血のシミが付いた時に知っておきたい3つのポイントを解説していきます。

1.着物の血液シミは応急処置していい？

外出先で着物に血のシミが付いた場合、すぐに応急処置をしたくなるところ。ただ血液シミの状態や着物の種類によっては、焦って応急処置をしない方が良い場合もあります。

応急処置前のチェックポイント

1）シミの大きさは？

応急処置ができるのは、シミの大きさが1センチ以下程度の場合です。大きさが2センチを越えている場合、無理に応急処置をするとかえって汚れを広げてしまうことが多いため、おすすめできません。シミの付いた場所は？血が付いた場所が裏地で、表地までに染み出していなければ応急処置で対処ができる場合もあります。裏地から表地にまで染み出した場合は、応急処置では対処しきれません。自宅または専門店でのシミ抜きが必要です。

2）着物の素材は？

着物の素材が次のようなものであれば、応急処置をしても基本的に大丈夫です。

・化繊（ポリエステル等）・ウォッシャブルウール・手洗いOKマークのある木綿着物

反対に正絹・ウール（羊毛）等の素材は、原則として応急処置はNG。汚れを広げるだけでなく、生地を傷める可能性もあります。

3）着物の生地の織り方は？

洗える素材の場合でも、生地が凹凸のある織り方をしている場合には応急処置をしない方が無難。汚れを押し込めてしまうことが多いです。上記のような点を確認した上で、応急処置を行いましょう。

着物の血のシミの応急処置方法

用意するもの

・ティッシュペーパー・タオルまたはハンカチ（2～3枚）

着物の血液シミの応急処置手順

1）ティッシュペーパー等で軽く表面を拭います。抑えつけないようにしましょう。 2）汚れても良いタオルまたはハンカチを冷水で濡らし、固く絞ります。3）濡らしたタオルで表面を軽く拭います。 4）汚れが目立たなくなったら、乾いたハンカチで水分を取ります。

注意点

※お湯を使うのはNGです。血が固まる原因になります。 ※飲食店の「おしぼり」を使用するのはやめましょう。香料や消毒液等の影響で生地が傷んだり、変色が起きる可能性があります。 ※上記の方法はあくまでも応急処置であり、汚れを取りきったものではありません。応急処置後には必ず自宅または専門店でのシミ抜きを行いましょう。

2.自分で行う着物の血液シミのシミ抜き方法は？

では着物に付いた血のシミには、自宅でどのように対処をすればよいのでしょうか。

シミ抜き前のチェックポイント

着物の血のシミをご自宅でシミ抜きする場合には、まず以下の点を確認しましょう。

1）シミはいつ付いた？

自宅で着物の血のシミ抜きができるのは、基本的に「付いた当日のシミ」までです。時間が経って乾いてしまったシミを自宅でキレイに取りきるのは難しくなります。乾いた血のシミを自宅で取るには、洋服や下着向けの酵素ジアスターゼ配合の血液しみ抜き剤・アルカリ性洗剤・漂白剤等が必要です。しかしこれらの強い成分を専門知識が無い状態で着物に使うと、汚れが取れても着物自体がダメになる可能性が高くなります。そのため「自宅での着物のシミ抜き」には使用ができません。

2）裏地・表地の素材は水洗いOK？

血のシミは「水溶性」という水に溶けやすい性質を持っています。反対に言うと、着物の血のシミをシミ抜きするには「水」を使う工程が絶対に必要なのです。 水洗いNGの素材

・正絹（シルク）・ウール（羊毛）・ウール混紡・キュプラ・一部の木綿素材　等

上記のような素材は水による収縮が激しいため、自宅では血のシミのシミ抜きができません。

3）特殊加工はありませんか？

洗える素材の場合でも、次のような加工がある着物は自宅でのシミ抜きNGです。

・刺繍がある・レースが付いている・スパンコールが付いている・金箔・銀箔等の加工がある

4）天然の染料を使ってませんか？

藍染や草木染等の天然染料で染められた着物は、洗い方によっては変色・色落ち等を起こす場合があります。特に伝統工芸品の着物等の場合、木綿製品でも自宅でのシミ抜きは避けた方が無難です。上の点をチェックして問題が無ければ、自分でシミ抜きをしてもOK。チェックポイントの中にわからない点があったら、3.を先にお読みいただくことをおすすめします。

自宅で行う血のシミのシミ抜き方法

用意するもの

・液体タイプの中性洗濯洗剤・洗面器かバケツ・バスタオル・柔らかい布かタオル　2～3枚・着物専用のハンガー

事前の準備 裏地等の目立たない部分に少量の中性洗剤の溶液を付けて、変色や色落ち等が起きないかテストを行います。 着物の血液シミのシミ抜き手順

1）バスタオルを敷いた上に、着物のシミのある部分を広げておきます。 2）洗面器に冷水を入れて、中性洗剤を適量垂らして溶かします。 3）柔らかい布かタオルを2）の溶液に浸して、絞ります。 4）絞ったタオルで、シミがある部分をトントンと軽く叩きます。強く叩かず、汚れをタオルに移すように叩いていきましょう。 5）タオルの位置は常にかえて、キレイな面を当てるようにします。 6）汚れが取り切れたら、別のタオルを冷水で濡らして絞り、再度シミの部分を叩きます。 7）最後に中性洗剤を使って、着物の全体を手洗いして仕上げます。（洗濯機対応の場合にはネット使用で洗濯機洗いをしてもOKです）

3.血液シミに一切対処しない方が良いことも？

状態によっては着物の血のシミ抜きを行わず、何もせずに着物のクリーニング専門店や悉皆屋に持って行った方が良い場合もあります。

自宅で着物の血液シミに対処できないケース

着物の種類

・水洗いできない着物・着物の素材がわからない

シミの状態

・血のシミが乾いてしまっている・血のシミが茶色く変色している・血のシミの範囲が広い・いつ付いたシミかわからない

上のような場合は、自宅で血のシミ抜きをするのは一切NGです。無理にシミ抜きをしてしまうと、最悪の場合は専門店でも着物を元に戻せなくなってしまう可能性があります。

自宅での血のシミ抜きをおすすめしないケース

着物の色

・地色が薄い・色無地または無地の部分にシミがある

血のシミは、特に輪郭部分の汚れが残りやすいです。地色が薄かったり無地の部分だと、自宅のシミ抜きでは薄くシミが目立ち続けることも。無理にシミ抜き作業を続けると、毛羽立ち・色スレ等の原因になります。 シミの箇所

・縫い目がある部分にシミができた

縫い目部分のシミは糸に汚れが残りやすいため、後々にカビ等の原因となりやすいです。専門店でしっかりシミ抜きをすることをおすすめします。

おわりに

自宅で着物の血のシミのシミ抜きをする場合でも、専門店でシミ抜きをしてもらう場合でも、大切なのは「一刻も早く対処をする」という点です。血のシミは時間が経てば経つほど「取れないシミ」に変わっていきます。専門店に持ち込む場合も、早い段階で持ち込んだ方が比較的カンタンに処理が済むので、クリーニング料金が安く上がることが多いですよ。なお着物をクリーニング専門店に持ち込む場合には、血のシミであることやいつ頃付けたかはお店に伝えるのが理想的です。シミの種類をしっかり伝えることで、着物がキレイに仕上がる確率が高くなります。